- タブレット・音声入力・クラウド共有を組み合わせることで夜勤帯の負担も軽減できます
- 導入は「現状把握→試験導入→本格運用→定着チェック」の4ステップで進めるとつまずきが少なくなります
なぜ今、認知症グループホームでICT化が求められているのか
認知症グループホームは1ユニット9人という小規模な運営形態が多く、限られた人員で記録・申し送り・介護実務をこなす必要があります。厚生労働省の調査によれば、介護職員が記録業務に費やす時間は勤務時間全体の1割から2割程度を占めるとされ、これは夜勤帯の巡視や利用者対応の時間を圧迫する大きな要因になっています。
紙媒体での記録・申し送りには、次のような課題が指摘されてきました。
- 手書きのため読み取りに時間がかかる
- 情報が分散し、必要な履歴を探すのに手間がかかる
- 口頭申し送りが中心になり、伝達漏れが起きやすい
- 記録用紙の保管スペースや紛失リスクがある
こうした課題を解決する手段として、ICT(情報通信技術)を活用した記録システムの導入が全国のグループホームで進んでいます。
申し送り業務はICTでどう変わるのか
口頭申し送りに依存していた体制では、伝達内容が担当者の記憶や表現力に左右され、重要な情報が抜け落ちるリスクがありました。ICT化によって申し送りは次のように変化します。
- 記録がリアルタイムでスタッフ間に共有される
- 過去の記録を時系列で簡単に検索できる
- テンプレート化により記載漏れを防止できる
- 出勤前にスマートフォンやタブレットで前日の状況を確認できる
導入時にはどのような課題が起きやすいのか
ICT導入は効果が大きい一方、次のような課題も報告されています。
- 高齢のベテラン職員が操作に慣れるまで時間がかかる
- Wi-Fi環境の整備に想定外の費用が発生する
- 入力項目が多すぎて逆に手間が増えるケースがある
- システム障害時の代替手段が用意されていない
これらは事前の準備で多くが回避可能です。特にWi-Fi環境については、居室数に応じたアクセスポイントの増設が必要になる場合があるため、導入前に通信業者による現地調査を受けることをおすすめします。
導入をスムーズに進めるためのステップとチェックリスト
ICT導入は次の4ステップで進めると失敗が少なくなります。
- 現状把握:記録・申し送りにかかっている時間、課題を洗い出す
- 試験導入:1ユニットまたは1週間限定でテスト運用する
- 本格運用:全ユニットに展開し、マニュアルを整備する
- 定着チェック:3か月後、6か月後に効果測定を実施する
導入前に確認しておきたいチェックリストは次の通りです。
- 施設内のWi-Fi通信環境は十分か
- 端末の台数はシフト人数に対して足りているか
- 個人情報保護に関するセキュリティ設定は適切か
- 紙記録との併用期間と移行スケジュールは決まっているか
- 操作研修の時間をシフトに組み込めているか
- 障害発生時の代替記録方法を定めているか
このチェックリストを導入前会議で全項目確認しておくことで、現場の混乱を最小限に抑えられます。
まとめ
ICTを活用した介護記録・申し送りの効率化は、単なる業務時短にとどまらず、情報共有の質を高め、ヒヤリハットの減少や新人教育の効率化にも寄与します。導入時には現状把握から段階的な運用まで丁寧に進めることが成功の鍵となります。まずは自施設の記録業務にかかる時間を可視化するところから始めてみてください。
出典
この記事で扱う制度・報酬の一次資料です。数値や要件は公開時点のものなので、最新の内容は原典でご確認ください。
- 厚生労働省「介護事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き(令和3年度改訂・厚生労働省老健局)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001276275.pdf
