インボイス制度とは何か、GHに関係があるのか

インボイス制度は2023年10月1日から始まった適格請求書等保存方式のことです。消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書発行事業者が発行したインボイス(適格請求書)の保存が必要になりました。

認知症グループホームの経営者や管理者の中には、介護保険サービスは消費税がかからないので関係がないと考えている方も少なくありません。しかし実際には、委託契約や物品購入など事業運営に関わる多くの取引がインボイス制度の対象になります。まずGHの収入と支出のどこが課税取引で、どこが非課税取引なのかを整理することが出発点になります。

GHの介護報酬収入にインボイスは関係するか

消費税法別表第二では、介護保険法に基づく居宅サービス費や施設サービス費等について消費税を非課税とすることが定められています。認知症対応型共同生活介護、いわゆるグループホームの介護報酬もこの非課税規定の対象です。そのため、利用者や国民健康保険団体連合会に対する介護報酬の請求自体にインボイスの発行義務は生じません。

一方で、家賃や食材費、日用品費など利用者から実費として徴収している費用の一部は、非課税の範囲に含まれない場合があります。非課税となる範囲は限定列挙されているため、どの費目が非課税でどの費目が課税対象になりうるかは、顧問税理士に取引ごとに確認しておくことが望ましいです。

影響を受けるのはどの取引か、外部委託先の確認ポイント

GHの経理実務で実際にインボイス制度の影響が出やすいのは、支出側、つまり仕入税額控除に関わる取引です。具体的には次のような委託先や取引先との関係を見直す必要があります。

外部委託の確認が必要な取引例

  • 送迎業務を委託している個人事業主のドライバー
  • 訪問理美容サービスの事業者
  • 清掃業務の委託先
  • 食材の仕入れ先、弁当業者
  • 栄養士やリハビリ職など外部委託契約を結んでいる専門職
  • 消耗品、介護用品を購入している小規模な卸業者や販売店

これらの取引先が適格請求書発行事業者として登録しているかどうかで、法人側の仕入税額控除の可否が変わります。基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者は免税事業者となる制度が従来からありますが、免税事業者はインボイスを発行できないため、免税事業者のままの取引先と契約を続けると、原則として仕入税額控除ができなくなります。

免税事業者との取引はどう扱うか、経過措置の数字

免税事業者との取引をすべて打ち切る必要はありません。国税庁は激変緩和のための経過措置を設けており、免税事業者からの課税仕入れについても一定期間は仕入税額の一部を控除できる仕組みになっています。

経過措置の内容は次のとおりです。

  • 2023年10月1日から2026年9月30日まで 仕入税額相当額の80パーセントを控除可能
  • 2026年10月1日から2029年9月30日まで 仕入税額相当額の50パーセントを控除可能
  • 2029年10月1日以降 控除不可

この経過措置は時間が経つほど控除できる割合が下がる設計になっているため、委託先が将来的にインボイス発行事業者として登録する予定があるのか、登録しない方針なのかを早めに確認し、必要であれば契約条件の見直しや取引先の再検討を進めておくことが重要です。

経理実務で何を変えるべきか、対応チェックリスト

インボイス制度に対応するために、GHの経理担当者が実務上確認しておくべき項目を整理します。

取引先管理のチェック項目

  • 送迎、清掃、理美容、栄養指導など外部委託先ごとにインボイス発行事業者であるかを確認したか
  • 免税事業者である委託先について、経過措置の適用期間と控除割合を把握しているか
  • 新規に契約する委託先について、契約前にインボイス登録状況を確認する手順を設けたか
  • 複数の小規模事業者と取引がある場合、取引先リストを一覧化して定期的に更新しているか

帳簿と請求書管理のチェック項目

  • 受領した請求書が適格請求書の記載要件を満たしているか確認する体制があるか
  • 適格請求書発行事業者の登録番号を請求書上で確認しているか
  • 免税事業者からの請求書について、経過措置適用分であることが分かるよう帳簿に区分して記載しているか
  • 請求書や領収書の保存期間、保存方法が社内規程として明文化されているか

社内体制のチェック項目

  • 経理担当者がインボイス制度の経過措置のスケジュールを理解しているか
  • 顧問税理士と年に一度は取引実態の棚卸しを行う機会を設けているか
  • 新規の業務委託契約書に、インボイス発行事業者であることを確認する条項を入れているか

請求書・帳簿の保存要件は何が変わるか

仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書と、一定の事項を記載した帳簿の両方を保存する必要があります。適格請求書には登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などの記載が求められます。これまでの区分記載請求書等保存方式と比べて記載事項が増えているため、受け取った請求書がこの要件を満たしているかをその都度確認する運用に切り替えることが実務上のポイントになります。

一定規模以下の事業者に対しては、少額取引について帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例などの措置も設けられています。自法人がこうした特例の対象になるかどうかは、事業規模や取引金額によって異なるため、顧問税理士に確認したうえで経理フローに反映することをおすすめします。

まとめ

認知症グループホームの介護報酬収入そのものは消費税の非課税取引であるため、インボイス制度の直接的な発行義務は生じません。一方で、送迎や清掃、理美容といった外部委託先との取引は課税仕入れに該当する場合が多く、委託先がインボイス発行事業者かどうかで法人の仕入税額控除に影響が出ます。免税事業者との取引には経過措置があり、2026年9月末までは80パーセント、それ以降2029年9月末までは50パーセントの控除が認められていますが、段階的に縮小していくため、早めに取引先の登録状況を確認し、請求書や帳簿の保存体制を整えておくことが、経理実務を混乱させないための備えになります。

出典