この記事でわかること
- 認知症GHにおける向精神薬使用の現状と課題
- 多剤併用(ポリファーマシー)のリスク
- 安全な減薬の進め方と観察ポイント
- 精神科医と施設スタッフの連携体制の構築方法
認知症GHにおける向精神薬使用の現状
認知症グループホームの利用者のうち、約6割が何らかの向精神薬(抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬など)を服用しているとされる。BPSDの対症療法として処方されるケースが多いが、長期間漫然と処方が継続されている場合も少なくない。
厚生労働省は認知症の人への向精神薬使用について、「非薬物療法を優先し、薬物療法は最小限にとどめるべき」との方針を示している。2024年の報酬改定においても、向精神薬の適正使用を評価する仕組みが導入されている。
多剤併用のリスク
転倒リスクの増大
向精神薬は中枢神経を抑制する作用があり、ふらつきやめまいを引き起こす。複数の向精神薬を併用すると、その作用は相加的あるいは相乗的に増大する。認知症GHの利用者において、転倒による骨折は入院の主要因の一つであり、向精神薬の多剤併用はその重大なリスク因子となっている。
過鎮静
複数の鎮静作用を持つ薬剤を併用すると、日中の傾眠や意欲の低下が生じる。本来であれば活動的に過ごせる時間帯に、うとうとと座っているだけの状態が続くことは、利用者のQOLを著しく損なう。
嚥下機能の低下
向精神薬の中には嚥下反射を抑制するものがある。嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎のリスクに直結し、生命に関わる問題である。
認知機能へのさらなる影響
一部の向精神薬(特に抗コリン作用を持つ薬剤)は、認知機能をさらに低下させることがある。認知症の治療薬(コリンエステラーゼ阻害薬)と抗コリン作用を持つ薬剤を同時に服用している場合、相反する作用が生じている可能性がある。
薬剤の分類と特徴
抗精神病薬
興奮、妄想、幻覚に使用される。リスペリドン、クエチアピンなどの非定型抗精神病薬が主に使用される。錐体外路症状(パーキンソニズム)、過鎮静、転倒リスクの増大が主な副作用である。
ベンゾジアゼピン系薬剤
不安や不眠に使用される。長時間作用型は翌日の持ち越し効果が大きく、転倒リスクが高い。高齢者では短時間作用型も蓄積しやすいため注意が必要である。
抗うつ薬
認知症に伴ううつ症状に使用される。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主に使用される。低ナトリウム血症や消化器症状に注意する。
睡眠薬
不眠に使用される。ベンゾジアゼピン系からメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)やオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)への切り替えが推奨されている。
減薬の進め方
減薬の前提条件
減薬は「薬をやめること」が目的ではない。利用者のBPSDが適切にコントロールされている状態を維持しながら、不要な薬を減らし、副作用のリスクを下げることが目的である。
減薬を検討する前提として、非薬物療法の体制が整っていること、BPSDの状態が安定していること(少なくとも1~3ヶ月)、精神科医が減薬の判断を行うことが必要である。
段階的な減量
減薬は一気に行わず、段階的に進める。1剤ずつ、少量ずつ減量していく。例えば、リスペリドン1mgを服用している場合、まず0.5mgに減量し、2~4週間の経過観察を行った上で、問題がなければさらに減量を進める。
観察ポイント
減薬期間中は以下の点を注意深く観察し、記録する。
BPSDの再燃の有無(興奮、不穏、不眠、妄想など)。離脱症状の有無(不安、発汗、振戦など)。食事・睡眠・排泄パターンの変化。日中の活動性の変化。
変化が見られた場合は速やかに精神科医に報告し、減薬ペースの調整を仰ぐ。
施設スタッフの役割
減薬を成功させるためには、施設スタッフの観察と報告が不可欠である。日々の利用者の状態を最も近くで見ているのは介護スタッフであり、その気づきは精神科医の判断材料として極めて重要である。
観察結果を定量的に記録するために、BPSDの評価スケール(NPI-Q、DBDなど)を活用する。減薬開始前、減薬中、減薬後の各段階でスコアを比較することで、減薬の効果と安全性を客観的に評価できる。
Anchorの精神科オンライン診療では、施設の看護職員からの日々の観察報告を踏まえて、精神科医が段階的な減薬プランを策定する。定期的なオンライン診察により、減薬の経過を細かくモニタリングし、必要に応じて計画の修正を行う。対面受診の負担なく、安全な減薬を進められる体制は、利用者のQOL向上に直結する。
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