この記事でわかること
- 認知症の主要3類型の特徴と薬物療法の違い
- 各類型に使用される主な治療薬と期待される効果
- 介護職員が観察すべき副作用のポイント
- 類型に応じた精神科医との連携のあり方
なぜ類型の区別が重要なのか
認知症は単一の疾患ではなく、原因となる脳の病変の種類によって複数の類型に分類される。主要な類型として、アルツハイマー型認知症(AD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症(VaD)がある。
類型の区別が重要である理由は、使用すべき薬剤と避けるべき薬剤が類型によって大きく異なるためである。アルツハイマー型に有効な薬がレビー小体型では重篤な副作用を引き起こすことがあり、逆もまた然りである。
認知症GHの介護スタッフが処方の判断を行うわけではないが、各類型の薬物療法について基本的な知識を持っておくことで、副作用の早期発見や精神科医との効果的な連携が可能になる。
アルツハイマー型認知症の薬物療法
コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)
アルツハイマー型認知症では、脳内のアセチルコリンが減少する。コリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンの分解を抑制し、脳内のアセチルコリン濃度を保つ作用がある。
日本で承認されているChEIは、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3種類である。いずれも認知機能の低下を緩やかにする効果がある。
主な副作用として、消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢、食欲低下)、徐脈がある。食事量の減少が見られた場合は副作用の可能性を考慮し、医師に報告する。
メマンチン
メマンチンはNMDA受容体拮抗薬で、中等度から重度のアルツハイマー型認知症に使用される。興奮や攻撃性といったBPSDの軽減にも効果があるとされる。
ChEIとの併用が可能で、併用により単剤よりも高い効果が期待できるという報告がある。
主な副作用はめまい、頭痛、便秘である。
レカネマブ
2023年に承認された抗アミロイド抗体薬で、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβを脳から除去する。早期のアルツハイマー型認知症に使用され、認知機能の低下を遅らせる効果が示されている。
投与は2週間に1回の点滴静注で行われ、専門医療機関での管理が必要である。
レビー小体型認知症の薬物療法
抗精神病薬への過敏性
レビー小体型認知症で最も注意すべき点は、抗精神病薬への過敏性である。定型抗精神病薬は原則禁忌であり、非定型抗精神病薬であっても少量から慎重に使用する必要がある。
幻視や妄想がある場合でも、安易に抗精神病薬を使用することは避け、まず環境調整などの非薬物的アプローチを試みる。
コリンエステラーゼ阻害薬の効果
ドネペジルはレビー小体型認知症にも保険適用があり、認知機能の改善だけでなく、幻視の軽減にも効果があるとされる。
パーキンソン症状への対応
パーキンソニズムに対してはL-DOPA製剤が使用されることがあるが、精神症状(幻視の増悪など)との兼ね合いで慎重な用量調整が必要である。
REM睡眠行動障害への対応
クロナゼパムの少量投与が第一選択とされるが、過鎮静や転倒リスクに注意する。
前頭側頭型認知症の薬物療法
治療薬の現状
前頭側頭型認知症に対して承認された治療薬は現時点ではない。コリンエステラーゼ阻害薬は効果が乏しく、むしろ症状を悪化させる可能性があるため推奨されない。
BPSDへの対応
前頭側頭型認知症のBPSD(脱抑制、常同行動、食行動異常など)に対しては、SSRI(セルトラリンなど)が有効な場合があるとされている。興奮や攻撃性に対しては、少量の非定型抗精神病薬が使用されることもある。
トラゾドンが睡眠障害や興奮に対して効果を示すという報告もある。
介護スタッフが観察すべきポイント
薬物療法の効果と副作用を適切にモニタリングするために、介護スタッフは以下の点を観察し記録する。
日中の覚醒状態(傾眠の有無、活動性の変化)。歩行状態(ふらつき、すくみ足、転倒の頻度)。食事量と消化器症状。排泄状況(便秘の有無)。BPSDの頻度と強度の変化。表情や発語の変化。
精神科医との連携
認知症の類型に応じた適切な薬物療法は、精神科医の専門的な判断に基づいて行われるべきものである。特にレビー小体型認知症のように薬物選択を誤ると重篤な副作用を生じる類型では、精神科医の関与が不可欠である。
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