オンコール担当者はなぜメンタルヘルス不調に陥りやすいのか

認知症グループホームの夜間支援では、宿直者からの電話に応じるオンコール担当者が配置されるケースが一般的です。オンコール担当者は呼び出しがなくても常に対応可能な状態を維持する必要があり、睡眠が分断されやすい、休日でも気が休まらない、といった特有の負荷を抱えています。

こうした状態が続くと、慢性的な疲労感に加えて、情緒的な消耗感や、入居者や同僚への関心が薄れる脱人格化と呼ばれる状態が現れることがあります。これは心理学領域で燃え尽き症候群の代表的な特徴として知られるものです。管理者はオンコール担当者本人が不調を自覚しにくいことを前提に、体制面から予防策を講じる必要があります。

過重労働の労災認定基準から見るオンコール時間の目安

厚生労働省は脳血管疾患及び虚血性心疾患等の労災認定基準において、時間外労働時間と健康障害発症リスクの関連について目安を示しています。

次の表は、過重労働による健康障害防止のための総合対策および労災認定基準で示されている時間外労働の目安です。

時間外労働の目安評価の内容
月45時間以内時間外・休日労働の限度の目安とされる水準
月80時間超(発症前2~6か月平均)業務と発症の関連性が徐々に強まるとされる水準
月100時間超(発症前1か月)業務との関連性が強いと評価される水準

オンコール待機時間そのものが労働時間に算入されるかどうかは、待機中の行動制約の程度によって個別に判断されますが、実際の呼び出し対応や、それに伴う翌日の通常勤務への影響を含めて、担当者の総労働時間を月単位で把握しておくことが前提になります。呼び出し回数や対応時間を記録し、特定の職員に偏っていないかを定期的に確認することが、過重労働を防ぐ第一歩です。

ストレスチェック制度はGHにどう関わるか

労働安全衛生法第66条の10に基づくストレスチェック制度は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施を義務づけています。50人未満の事業場は当分の間努力義務とされていますが、小規模なグループホームであっても、法人全体で50人以上を雇用している場合は対象となることがあるため、自法人の適用状況を確認しておく必要があります。

努力義務の範囲にとどまる場合でも、ストレスチェックの仕組みを参考にした簡易なセルフチェックを定期的に取り入れることは、オンコール担当者自身が不調に早く気づくきっかけになります。

燃え尽きを防ぐ体制づくりのチェックリスト

体制整備の際に確認しておきたい項目を整理します。

  • オンコール当番表を作成し、特定の職員に呼び出しが集中していないか月単位で確認しているか
  • 呼び出し対応の記録に、対応時間と翌日の勤務状況を併記しているか
  • オンコール担当者が相談できる窓口(管理者、産業医、外部相談機関など)を明示しているか
  • 当番明けの職員に休息を取れる勤務配置を組んでいるか
  • 定期的な面談で、睡眠状況や心身の負担感を確認しているか
  • 不調が疑われる職員について、配置転換や当番免除などの選択肢を用意しているか

これらは特別な予算を必要としない運用レベルの工夫が中心です。まずは記録の整備から始め、負荷の偏りを可視化することが現実的な第一歩になります。

相談体制はどう整えるべきか

産業医の選任義務がある事業場では、長時間労働者に対する面接指導の仕組みを活用できます。選任義務のない小規模事業場であっても、地域産業保健センターなど外部の相談窓口を案内することで、職員が社内に言い出しにくい不調を相談できる経路を確保できます。

管理者自身が日常的な声かけを通じて異変に気づく仕組みも重要です。遅刻や欠勤の増加、表情の変化、対応の雑さといった小さなサインを見逃さない体制づくりが、結果的に離職の防止にもつながります。

まとめ

オンコール担当者の燃え尽きは、睡眠分断と緊張状態の継続という業務特性から生じやすいリスクです。厚生労働省が示す時間外労働の目安やストレスチェック制度の枠組みを基準にしながら、呼び出し負荷の記録と可視化、相談窓口の明示という基本的な体制を整えることが予防の中心になります。特別な制度や費用を伴わなくても、日々の記録と声かけの積み重ねが、担当者の心身の健康を守る土台になります。

出典