この記事でわかること
- パーソンセンタードケアの基本理念と5つの心理的ニーズ
- 業務中心のケアからの転換方法
- DCM(認知症ケアマッピング)によるケアの質の評価
- 日常業務の中でパーソンセンタードケアを実践するコツ
パーソンセンタードケアとは
パーソンセンタードケア(Person-Centred Care)は、イギリスの心理学者トム・キットウッドが1990年代に提唱した認知症ケアの理念である。「認知症を持つ人を一人の人間として尊重し、その人の視点に立ってケアを提供する」ことを核心とする。
キットウッドは、それまでの認知症ケアが疾患の管理に偏り、認知症の方の「人としての存在」が軽視されてきたことを批判した。そして、認知症の方の行動は、脳の障害だけでなく、本人の性格、生活歴、健康状態、社会心理的環境が複合的に影響して生じるという「豊かなモデル」を提示した。
5つの心理的ニーズ
キットウッドは、認知症の方が持つ5つの心理的ニーズを明らかにした。これらのニーズが満たされることで、認知症の方のウェルビーイングが保たれる。
くつろぎ(Comfort)は、不安や苦痛が解消され、安心できる状態。温かい環境、痛みの緩和、穏やかな声かけがこのニーズを満たす。
愛着(Attachment)は、特定の人との絆を感じられること。なじみのスタッフとの関係性、家族とのつながりがこのニーズに対応する。
たずさわり(Occupation)は、何かに関わっている、役に立っているという実感。活動への参加、簡単な家事への参画がこのニーズを満たす。
アイデンティティ(Identity)は、自分が誰であるかを確認できること。名前で呼ばれること、その人の歴史や好みが尊重されることが該当する。
包含(Inclusion)は、集団の中に受け入れられていること。活動への参加機会の提供、会話の輪に入れることがこのニーズを満たす。
業務中心からの転換
認知症GHの日常は、食事、入浴、排泄、服薬といった定型業務の連続である。業務を時間通りにこなすことに注力するあまり、「8時に朝食」「10時に入浴」というスケジュールに利用者を合わせてしまうことがある。
パーソンセンタードケアへの転換は、このスケジュールを柔軟にするところから始められる。朝食の時間に起きたくない方は少し遅めに食事を提供する、入浴を嫌がる方には別の時間帯や方法を検討するなど、利用者一人ひとりのペースに合わせる工夫である。
「全員同じ時間に同じことをする」ことが効率的に見えても、それによってケア拒否やBPSDが発生すれば、結果的に対応に時間を取られる。利用者のペースを尊重することは、長い目で見れば効率化にもつながる。
個別ケア計画への反映
パーソンセンタードケアを実践するためには、利用者一人ひとりの生活歴、性格、好み、習慣を把握した個別ケア計画が不可欠である。
入居時に家族から詳細な生活歴を聴取し、ライフストーリーシートとして整理する。職業歴、趣味、家族構成、好きな食べ物、日課の習慣などを記録し、スタッフ全員が共有する。
このライフストーリーシートは、日々のケアの中で活用する。音楽好きだった方には音楽を提供し、園芸が趣味だった方には植物の世話を勧めるなど、その方らしい生活を支えるケアにつなげる。
DCMによるケアの質の評価
DCM(Dementia Care Mapping)は、パーソンセンタードケアの実践度を客観的に評価するツールである。訓練を受けた評価者が、利用者の行動と心理状態を5分ごとに観察・記録し、ケアの質を数値化する。
DCMの評価結果は、「良いケアの実践」と「改善が必要なケアの実践」を具体的に示してくれる。定期的にDCMを実施することで、ケアの質の変化を追跡し、改善のPDCAサイクルを回すことができる。
パーソンセンタードケアの理念を持ったスタッフが、精神科医と連携してBPSD対応を行うことで、利用者にとって最善のケアが実現する。Anchorの精神科オンライン診療では、利用者の生活歴や個別性を踏まえた上で、その方に合った治療方針を精神科医とともに検討できる。
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