結論:認知症GHの入居者は原則として算定対象外

認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の入居者に対して、精神科訪問看護を入れて報酬を得る、という組み立ては制度上成立しにくい。理由は2つあり、どちらも一次資料に明記されている。

この記事は、精神科訪問看護がどの保険の給付なのかを整理したうえで、算定できない根拠と、代わりに何で医療連携を組むかをまとめたものである。

精神科訪問看護は医療保険の給付である

精神科訪問看護基本療養費は、医療保険の訪問看護療養費の中に置かれている。介護保険の給付ではない。

介護保険の訪問看護費を定めているのは指定居宅サービス介護給付費単位数表(告示第19号)だが、ここに並んでいるのは訪問時間による区分だけである。

区分(指定訪問看護ステーションの場合)単位数
20分未満314単位
30分未満471単位
30分以上1時間未満823単位
1時間以上1時間30分未満1,128単位

「精神科訪問看護」という区分は存在しない。したがって、精神科訪問看護を介護保険で請求するという前提そのものが誤りである。逆に、医療保険と介護保険を「併用できない」という説明も、そもそも同じ給付が両方にあるわけではないため成り立たない。

算定できない2つの根拠

根拠1 提供を受けているサービスによる制限

訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(告示第67号)の区分番号01―2の注12は、次のように定めている。

利用者が次のいずれかに該当する場合は、所定額は算定しない。ただし、別に厚生労働大臣が定める場合については、この限りでない。

  • イ 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院等の医師又は看護師若しくは准看護師が配置されている施設に現に入院又は入所している場合
  • ロ 介護保険法第8条第11項に規定する特定施設入居者生活介護又は同条第20項に規定する認知症対応型共同生活介護の提供を受けている場合

認知症対応型共同生活介護は、ロにそのまま該当する。

根拠2 主傷病による制限

医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項等の一部改正(令和6年3月27日 保医発0327第8号)には、次の記載がある。

精神疾患を有する患者について、精神科訪問看護指示書が交付された場合は、要介護被保険者等の患者であっても算定できる。ただし、認知症が主傷病である患者(精神科在宅患者支援管理料を算定する者を除く。)については算定できない。

認知症GHの入居者は、認知症が主傷病であることが前提のサービスである。指示書が交付されていても、この記載により算定できない。

根拠1と根拠2は別々の制限であり、両方にかかる。例外に当たるかどうかは個別の判断になるため、実施を検討する場合は地方厚生局に事前に照会すること。

では何で医療連携を組むか

精神科の関与を厚くしたいときに、認知症GHが使える実在の仕組みは次のとおりである。

加算名単位数
医療連携体制加算(Ⅰ)イ/ロ/ハ57単位/47単位/37単位(1日につき)
医療連携体制加算(Ⅱ)5単位(1日につき)
協力医療機関連携加算 イ/ロ100単位/40単位(1月につき)
認知症専門ケア加算(Ⅰ)/(Ⅱ)3単位/4単位(1日につき)
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)/(Ⅱ)150単位/120単位(1月につき)

医療連携体制加算(Ⅰ)ハであれば、事業所の職員として、または病院、診療所若しくは訪問看護ステーションとの連携により看護師を1名以上確保していればよい。看護師を雇わずに体制を組む場合の入口はここになる。

精神科医療そのものは、協力医療機関や主治医による外来受診・往診といった医療保険の枠組みで手当てする。介護報酬の側で用意されているのは、その医療につながる体制を評価する加算であって、訪問看護そのものへの報酬ではない。

なお、認知症GHの入居中に介護保険の居宅サービスをどこまで併用できるかは別の論点であり、保険者の取扱いを含めて確認が必要である。

誤って請求していた場合

算定要件を満たさない請求は返還の対象になり得る。単位数や保険の種別を解説記事から引き写して請求を組んでいた場合は、次の順番で確認する。

  1. 実際に何を、どの保険で、どの区分で請求していたかを月別に洗い出す
  2. 告示の現行条文と突き合わせ、要件を満たしていたかを確認する
  3. 満たしていない可能性がある場合は、地方厚生局または保険者に取扱いを照会する

まとめ

精神科訪問看護基本療養費は医療保険の給付であり、介護保険に同じ区分はない。そして認知症対応型共同生活介護の提供を受けている場合は、告示第67号の注12により原則として算定せず、認知症が主傷病の患者は指示書があっても算定できない。認知症GHで精神科との連携を厚くするなら、医療連携体制加算と協力医療機関連携加算を軸に、精神科医療そのものは外来や往診で組む。保険の種別と区分は、必ず告示の現行条文で確かめること。

出典