この記事でわかること
- せん妄の定義と認知症のBPSDとの違い
- 介護現場でせん妄を疑うべきサイン
- せん妄の原因となりやすい要因
- 発見時の初期対応と医師への報告方法
せん妄とは
せん妄は、身体的な原因(感染症、脱水、薬剤の影響など)によって急性に発症する意識障害・注意障害を主体とする症候群である。一時的な脳機能の障害であり、原因が除去されれば回復し得る。
認知症グループホームでは、利用者がもともと認知症を有しているため、せん妄が出現しても「BPSDが悪化した」と解釈されがちである。しかし、せん妄と認知症のBPSDは原因も対応も異なり、せん妄を見逃すことは重大な身体疾患の見落としにつながる危険がある。
せん妄と認知症BPSDの鑑別ポイント
発症の仕方
せん妄は数時間から数日で急性に発症する。昨日まで普通だった方が突然混乱状態になった場合は、せん妄の可能性が高い。認知症のBPSDは通常、緩徐に出現し、日単位ではなく週~月単位で変化する。
意識レベル
せん妄では意識の変容が見られる。ぼんやりしている、話しかけても反応が鈍い、あるいは逆に異常に興奮しているなど、通常の覚醒状態とは明らかに異なる。認知症のBPSDでは、意識レベル自体は保たれていることが多い(レビー小体型認知症の変動を除く)。
注意力
せん妄では注意力の著しい低下が見られる。会話の途中で話が追えなくなる、簡単な指示に従えなくなるなど。認知症でも注意力は低下するが、せん妄ほど急激ではない。
症状の変動
せん妄では、1日の中で症状が大きく変動する。日中は比較的落ち着いているが夜間に急に悪化する(夜間せん妄)、あるいは時間によって意識のレベルが変わるなどのパターンが見られる。
幻覚の種類
せん妄では幻視が出現しやすい。虫や動物が見える、天井に文字が見えるなどの訴えがある場合、せん妄の可能性を考える(ただし、レビー小体型認知症でも幻視は出現するため、これだけでは鑑別できない)。
せん妄の原因
身体疾患
尿路感染症は高齢者のせん妄の最も多い原因の一つである。発熱がなくても尿路感染からせん妄に至ることがある。肺炎、脱水、便秘(特に宿便)、電解質異常、低血糖なども原因となる。
薬剤
薬剤の追加や変更後にせん妄が出現した場合、薬剤性せん妄の可能性がある。抗コリン薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、オピオイド、ステロイドなどがせん妄を引き起こしやすい。
環境変化
入院、施設の転居、居室の変更などの環境変化もせん妄の誘因となる。認知症の方は特に環境変化に脆弱である。
疼痛
痛みを適切に訴えられない認知症の方では、疼痛がせん妄の原因となっていることがある。骨折、関節痛、口腔内の痛みなど。
発見時の初期対応
安全の確保
まず利用者の安全を確保する。転倒・転落のリスクが高いため、ベッド柵の確認、危険物の除去を行う。
バイタルサインの測定
体温、血圧、脈拍、酸素飽和度を測定する。発熱があれば感染症、血圧の異常があれば脳血管障害の可能性を考える。
情報の収集
直近の服薬変更の有無、食事量・水分量の推移、排尿・排便の状況、痛みの訴えの有無を確認する。
医師への報告
上記の情報を速やかに医師(かかりつけ医または看護職員経由で当番医)に報告する。報告の際は「昨日まで普通だった方が急に混乱状態になった」という点を強調する。「BPSDが悪化した」と報告すると、せん妄の可能性が見落とされることがある。
せん妄への対応
せん妄の治療の基本は原因の除去である。感染症であれば抗菌薬の投与、脱水であれば補液、薬剤性であれば原因薬剤の中止・変更を行う。
環境面では、静かで安定した環境を提供し、見当識を助けるためにカレンダーや時計を見えるところに置く。なじみのスタッフが対応する。日中は十分な照明を確保し、夜間はフットライトで最低限の明るさを保つ。
重度の興奮が安全上の問題となる場合は、少量の抗精神病薬が使用されることがある。ただし、原因疾患の治療が最優先であることを忘れてはならない。
精神科医との連携
せん妄の鑑別と管理には医療の関与が不可欠である。特に、せん妄と認知症のBPSD悪化が合併しているケースや、原因の特定が難しいケースでは、精神科医の専門的な評価が必要である。
Anchorの精神科オンライン診療では、せん妄が疑われるケースについても臨時の診察に対応している。「いつもと様子が違う」という介護スタッフの気づきを起点に、速やかに精神科医の評価を受けられる体制は、重大な身体疾患の見落としを防ぐセーフティネットとなる。
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