TL;DR
- 運営基準省令改正により虐待防止措置、業務継続計画(BCP)策定、記録の電磁的対応などが順次義務化されています
- 経過措置が終了した項目は未対応のまま放置すると減算対象になるため、管理者は早期の点検が必須です
- 本記事では改正内容を一覧表とチェックリストにまとめ、実務担当者がそのまま使える形で整理しています
運営基準省令とは何を定めているのか?
運営基準省令とは、指定認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)が満たすべき人員・設備・運営に関するルールを定めた省令です。介護保険法に基づき厚生労働省が定め、都道府県・市町村の指定権者が運営指導の際にこの基準への適合状況を確認します。
近年は数年おきに改正が行われており、単発の変更ではなく複数の制度が同時並行で進んでいる点が特徴です。管理者が把握すべきなのは「いつから義務化されたか」「経過措置がいつ終わるか」の2点です。
直近の運営基準省令改正で何が変わったのか?
主な改正項目を時系列で整理すると以下の通りです。
| 改正項目 | 義務化時期 | 経過措置終了 | 未対応時の影響 |
|---|---|---|---|
| 高齢者虐待防止措置 | 2021年度 | 2024年度 | 虐待防止措置未実施減算 |
| 業務継続計画(BCP)策定 | 2021年度 | 2025年度 | 業務継続計画未策定減算 |
| 感染症対策の強化(委員会・研修・訓練) | 2021年度 | 2024年度 | 運営指導での指摘対象 |
| ハラスメント対策(方針明確化・相談窓口) | 2021年度 | なし(努力義務含む) | 労務トラブルの温床 |
| 記録の電磁的記録・保存の容認 | 2021年度 | なし | 対応は任意 |
| ICTを活用した会議・多職種連携の容認 | 2021年度以降順次 | なし | 対応は任意 |
| 高齢者虐待防止・身体拘束適正化のための委員会一体的開催の容認 | 2024年度 | なし | 効率化の余地あり |
表の通り、義務化と経過措置終了のタイミングにはずれがあります。特に虐待防止措置とBCP策定は既に減算対象となっているか、まもなくなる項目のため優先度を上げて確認が必要です。
虐待防止措置は具体的に何をすればよいのか?
虐待防止措置の義務化により、次の4点がセットで求められています。
- 虐待防止のための指針の整備
- 虐待防止委員会の設置(概ね年2回以上開催)
- 従業者への研修の実施(年1回以上)
- 虐待防止担当者の配置
運営指導では議事録や研修記録の有無を確認されるケースが多く、委員会を形だけ設置して記録を残していない事業所が指摘を受けています。委員会は身体拘束適正化委員会と一体的に開催することが認められているため、開催負担を抑えたい事業所は統合開催を検討するとよいでしょう。
BCP未策定のまま経過措置終了を迎えるとどうなるのか?
業務継続計画は感染症発生時と非常災害発生時の両方について策定が求められています。経過措置終了後は未策定の場合、基本報酬から一定割合の減算が適用されます。
BCPの策定だけでなく、次の3点まで実施して初めて基準を満たしたとみなされます。
- 計画の策定(感染症・災害の両方)
- 従業者への周知
- 年1回以上の研修及び訓練の実施と記録
計画書を作成しただけで訓練記録がない事業所は、運営指導で追加是正を求められる典型例です。訓練は机上訓練でも認められるため、まずは年間スケジュールに組み込むことが現実的な対応になります。
記録のICT化・電磁的保存はどこまで認められているのか?
運営基準省令改正により、これまで書面での作成・保存・交付が原則とされていた記録類について、電磁的な方法による対応が明確に認められました。対象となる主な記録は次の通りです。
- 運営規程の掲示(書面掲示に加えて常時閲覧可能な形での提示も可)
- 各種計画書・記録の作成・保存
- 利用者や家族への説明・同意に関する書類
注意点として、電磁的記録を導入する場合でも情報の真正性・見読性・保存性を確保する社内ルールの整備が求められます。単にPDF化するだけでなく、誰がいつ作成・修正したかを追跡できる運用にしておくことが望まれます。
管理者が今すぐ確認すべきチェックリスト
以下の項目について、自事業所の対応状況を点検してください。
- 虐待防止指針は最新の内容に更新されているか
- 虐待防止委員会は年2回以上開催され議事録が残っているか
- 虐待防止担当者は明確に配置されているか
- BCP(感染症・災害)は両方とも策定済みか
- BCPの研修・訓練は年1回以上実施し記録が残っているか
- ハラスメント相談窓口は周知されているか
- 記録の電磁的保存を行う場合、社内ルールは明文化されているか
- 直近の運営指導で指摘を受けた項目への是正は完了しているか
8項目のうち未対応が2つ以上ある場合は、次回の運営指導で複数指摘を受けるリスクが高い状態と考えられます。優先順位をつけて3か月以内の是正を目標にすることをおすすめします。
今後の改正動向にどう備えるべきか?
運営基準省令は今後も介護報酬改定と連動して見直しが続く見込みです。管理者としては、厚生労働省や都道府県から発出される通知・Q&Aを定期的に確認する体制を整えるとともに、法人内で改正情報を共有する担当者を決めておくことが実務的な備えになります。
年度替わりのタイミングで運営規程・各種指針・記録様式を一括点検する年間スケジュールを組んでおくと、改正のたびに慌てて対応する事態を避けられます。
まとめ
運営基準省令改正は一度に大きく変わるものではなく、虐待防止・BCP・記録のICT化といった複数の項目が段階的に義務化・経過措置終了を迎える形で進んでいます。管理者はまず自事業所の対応状況をチェックリストで棚卸しし、減算リスクのある項目から優先的に是正していくことが求められます。
