この記事でわかること

  • 認知症に伴ううつとアパシーの違いと見分け方
  • 介護現場での早期発見チェックポイント
  • 非薬物療法による対応の具体策
  • 精神科医への相談が必要な場合の判断基準

見逃されやすい精神症状

認知症グループホームにおいて、興奮、徘徊、妄想といった「目立つ」BPSDは早期に発見されやすい。スタッフの注意が向きやすく、対応も比較的迅速に行われる。

一方で、うつやアパシー(無気力)といった「静かな」精神症状は見逃されやすい傾向がある。「認知症が進行して元気がなくなった」「年齢的に活動量が減るのは仕方ない」と解釈され、介入のタイミングを逃すことがある。

しかし、うつやアパシーは利用者のQOLに深刻な影響を及ぼす。食欲低下による栄養状態の悪化、活動量低下による身体機能の低下、社会的交流の減少による認知機能の加速度的な低下など、負のスパイラルに陥る可能性がある。

うつ症状の特徴

認知症に伴ううつ症状は、一般的なうつ病と重なる部分も多いが、認知症特有の表れ方もある。

表情の変化として、以前より笑顔が減った、悲しそうな表情が増えた、涙もろくなったなどが見られる。

活動面では、以前楽しんでいた活動に参加しなくなった、食事量が減った、身支度に無頓着になったなど。

言語面では、「もう生きていてもしょうがない」「迷惑をかけて申し訳ない」「死にたい」といった発言がある場合は特に注意が必要である。

身体面では、不眠(特に早朝覚醒)、食欲低下、便秘、漠然とした身体的不調の訴えが増えることがある。

アパシーの特徴

アパシーは意欲、感情、認知の3領域にわたる自発性の低下を特徴とする。うつとの決定的な違いは、アパシーでは本人が苦痛を感じていないことが多い点である。

意欲面では、自発的な行動が減る、声をかけなければ一日中座っている、食事に誘わないと食べない。

感情面では、喜怒哀楽の表出が乏しくなる、出来事に対する関心が薄れる、家族が面会に来ても反応が薄い。

認知面では、新しいことへの好奇心がなくなる、会話の量が減る。

早期発見のチェックポイント

以下の変化が2週間以上持続する場合は、うつまたはアパシーの可能性を考える。

レクリエーションへの参加が以前より明らかに減った。食事量が普段の7割以下に低下した。入浴や着替えに対する抵抗ではなく無関心が見られる。他の利用者やスタッフとの会話が減った。表情の変化が乏しくなった。以前の趣味や好きなことに反応しなくなった。

非薬物療法による対応

うつに対して

活動スケジュールを組み立て、少しずつ活動量を増やしていく。ただし、無理に活動を強要しないこと。「やりたくない」と言われた場合は尊重しつつ、別の選択肢を提示する。

本人にとって達成感が得られる活動を取り入れる。簡単な家事(タオルたたみ、食器拭きなど)や園芸など、以前の生活で親しんでいた活動が適している。

回想法やバリデーション療法で、感情の表出を促す。特に、楽しかった思い出やポジティブな体験を引き出す関わりが有効である。

アパシーに対して

環境からの適切な刺激を増やす。音楽、光、香り、触覚刺激など、五感を刺激する活動を日課に組み込む。

1対1の関わりの時間を確保する。アパシーの方はグループ活動よりも、個別の関わりに反応しやすい傾向がある。

具体的な行動の提案を行う。「何かしませんか」という漠然とした問いかけではなく、「一緒にお花に水をあげませんか」と具体的に提案する。

薬物療法の検討

うつに対して

非薬物療法で2~4週間経っても改善が見られない場合、抗うつ薬の使用を検討する。認知症高齢者に対しては、SSRIが第一選択とされることが多い。

副作用として低ナトリウム血症、消化器症状、転倒リスクに注意する。少量から開始し、効果と副作用を慎重にモニタリングする。

アパシーに対して

アパシーに対する確立された薬物療法はまだ限られているが、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)がアパシーの改善に寄与するとの報告がある。メチルフェニデートの使用も検討されるが、認知症高齢者への適用については慎重な判断が必要である。

精神科医との連携

うつやアパシーの鑑別は、認知症の進行による変化との区別が難しい場合がある。特に、希死念慮を伴ううつは緊急性が高く、精神科医の速やかな評価が必要である。

Anchorの精神科オンライン診療では、うつやアパシーを含むBPSD全般について、精神科医の専門的な評価と治療方針の提案を受けることができる。「静かな」症状は緊急性が低いと判断されがちだが、早期の介入がQOL維持に大きく寄与する。定期的なオンライン診察の中で、これらの症状にも目を配る体制が重要である。

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