この記事でわかること

  • 夕暮れ症候群のメカニズムと出現しやすい条件
  • 午後の環境調整で予防するための具体的な方法
  • 症状が出たときの声かけと対応手順
  • 光療法の導入方法と効果

夕暮れ症候群とは

夕暮れ症候群(サンダウニング)は、認知症の方が夕方から夜間にかけて不穏、興奮、混乱、焦燥感を示す状態を指す。英語では「Sundowning」あるいは「Sundown Syndrome」と呼ばれる。

認知症グループホームの利用者のうち、約2~4割がこの症状を呈するとされている。特にアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症で出現頻度が高い。

具体的な症状としては、そわそわと落ち着きがなくなる、「家に帰りたい」と繰り返す、不安そうな表情になる、怒りっぽくなる、泣き出す、同じ質問を繰り返す、衣類をいじる、歩き回るなどが挙げられる。

夕暮れ症候群の原因

概日リズムの乱れ

最も有力とされている原因は、概日リズム(体内時計)の乱れである。認知症により脳の視交叉上核(概日リズムの中枢)が障害されると、メラトニンの分泌パターンが崩れ、夕方に覚醒と睡眠の境界が曖昧になる。

疲労の蓄積

日中の活動による疲労が午後に蓄積し、認知機能の処理能力が低下する。朝は比較的穏やかだった方が、夕方になると環境からの刺激を処理しきれなくなり、混乱や不安につながる。

環境要因

夕方は照明が暗くなり始め、影が増える時間帯である。視空間認知が低下している認知症の方にとって、薄暗い環境は不安を増大させる。また、夕方はスタッフの交代時間と重なることが多く、なじみの顔がいなくなることも不安の原因となる。

帰宅願望との関連

かつての生活習慣として「夕方は家に帰る時間」という記憶が残っている場合、夕方になると帰宅願望が強まる。これは夕暮れ症候群の一因であると同時に、本人の生活歴に根ざした自然な反応でもある。

予防的な環境調整

照明の工夫

午後2時以降は、居室や共有スペースの照明を意識的に明るくする。自然光が減り始める時間帯に合わせて、室内照明を段階的に明るくすることで、急激な環境変化を避ける。

蛍光灯よりも電球色のLEDライトが推奨される。白色光は覚醒度を高めすぎることがあるため、温かみのある光で安心感を演出する。

午後の活動プログラム

午後に適度な活動を組み込むことで、夕方の不穏を軽減できる。ただし、午後3時以降の激しい活動は逆効果になることがあるため、穏やかな活動(おやつ作り、散歩、回想法など)が望ましい。

午後2時~3時のおやつの時間を「お茶の会」として定着させ、穏やかなコミュニケーションの場にしている施設では、夕暮れ症候群の出現率が低いという報告がある。

スタッフ配置の工夫

夕方の時間帯になじみのスタッフが配置されるよう、シフトを調整する。特に夕暮れ症候群が顕著な利用者に対しては、その方の対応に慣れたスタッフが夕方に勤務できるよう配慮する。

交代時間帯の申し送りを利用者の目の前で行わない、交代を段階的に行うなどの工夫も効果がある。

症状出現時の対応

声かけの方法

不穏が始まった利用者に対しては、まず穏やかな声で名前を呼び、安心できる言葉をかける。「〇〇さん、一緒にお茶を飲みましょうか」「夕飯の準備を手伝ってもらえますか」など、具体的な行動の提案が効果的である。

「もう帰る時間じゃないですよ」「ここがお家ですよ」という否定的な言葉は、本人の不安を増大させるため避ける。

環境の切り替え

不穏が強い場合は、今いる場所から別の場所に移動することで気分が切り替わることがある。居室から共有スペースへ、あるいはその逆へ、さりげなく場所を変える。

窓の外が暗くなっている場合はカーテンを閉め、室内の照明を十分に明るくする。テレビの刺激が影響している場合は、静かな音楽に切り替える。

身体面のチェック

夕方の不穏が身体的不快から来ている可能性も忘れてはならない。空腹、口渇、便秘、尿意、痛みなどの有無を確認する。特に水分摂取量が少ない日は夕方に不穏が出やすい傾向がある。

光療法の活用

光療法は夕暮れ症候群に対するエビデンスのある介入方法である。2,500~10,000ルクスの高照度光を午前中に30分~2時間浴びることで、概日リズムを整え、夕方の不穏を軽減する。

専用の光療法ライトを使用する方法のほか、午前中の屋外散歩で自然光を浴びる方法も有効である。曇りの日でも屋外の照度は2,500ルクスを超えることが多い。

光療法の効果は即日ではなく、1~2週間の継続で徐々に現れる。効果測定のために、開始前と開始後のBPSD出現状況を記録しておくことが重要である。

精神科医への相談が必要なケース

環境調整や非薬物的アプローチを2週間以上継続しても改善が見られない場合や、夕暮れ症候群に伴って攻撃性が強い場合は、精神科医への相談を検討する。

概日リズムの調整には、薬物療法(ラメルテオンなどのメラトニン受容体作動薬)が有効なケースもある。非薬物療法と薬物療法を組み合わせることで、より確実な改善が見込める。

Anchorの精神科オンライン診療では、夕方の症状が出現する前の時間帯に診察を設定することも可能である。施設での非薬物療法の実施状況を共有した上で、必要に応じた薬物療法の提案を受けられる。通院不要で精神科医の助言が得られるため、スタッフも安心して夕方のケアに臨むことができる。

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