認知症専門ケア加算IIとは何か
認知症専門ケア加算は、認知症の利用者に対して専門性の高いケアを体制として提供している事業所を評価する加算です。認知症対応型共同生活介護を含む複数のサービス種別に設定されており、加算Iと加算IIの2段階に分かれています。
加算IIは加算Iの基準をすべて満たしたうえで、認知症介護指導者研修修了者の配置と、介護職員等に対する研修計画の作成・実施が追加で求められます。単に人員を配置するだけでなく、事業所全体の認知症ケアの質を計画的に底上げする体制があるかどうかが問われる加算だと理解しておくと、要件の読み違いを防げます。
単位数はサービス種別や改定年度ごとに告示で定められているため、算定を検討する際は必ず直近の告示で最新の単位数を確認してください。本記事では金額ではなく、取得の可否を左右する人員要件と研修計画の立て方に絞って整理します。
認知症専門ケア加算I・IIの違いは何か
加算IIを目指す前に、まず加算Iの要件を正確に押さえる必要があります。加算IIは加算Iの上位互換であり、加算Iの基準を満たせていなければ加算IIの算定はできません。
加算Iの主な要件は次の3点です。
- 事業所の利用者総数のうち、日常生活自立度ランクIII以上に該当する利用者の占める割合が50%以上であること
- 認知症介護実践リーダー研修修了者を、利用者数に応じた人数以上配置し、チームとして専門的なケアを実施していること
- 認知症ケアに関する留意事項の伝達や技術的指導に係る会議を定期的に開催していること
加算IIはこれらに加え、次の2点が必要になります。
- 認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を行っていること
- 介護職員等に対する認知症ケアに関する研修計画を作成し、当該計画に従って研修を実施、または実施を予定していること
加算Iは現場リーダーによる実践的なケア体制、加算IIは指導者による教育体制まで求められると整理すると分かりやすいです。
人員要件をどう満たすか
人員要件で現場が迷いやすいのが、認知症介護実践リーダー研修修了者の配置人数の計算方法です。基準は利用者数に応じて次のように設定されています。
| 対象者数 | 必要な配置人数 |
|---|---|
| 20人未満 | 1名以上 |
| 20人以上 | 10人またはその端数を増すごとに1名を加えた人数以上 |
例えば対象者が25人の場合、20人を超えた5人分を端数として1名分に換算し、基準の2名に1名を加えて3名以上の配置が必要になる考え方です。利用者数は固定ではなく変動するため、月次で対象者数と配置人数のバランスを確認する運用が望ましいです。
加算IIではこれに加え、認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置する必要があります。この研修は実践リーダー研修よりも受講のハードルが高く、受講枠も限られているため、計画的な人材育成が欠かせません。
人員要件を満たすためのチェックリストを整理すると次の通りです。
- 対象者(日常生活自立度ランクIII以上)の人数と割合を毎月記録しているか
- 認知症介護実践リーダー研修修了者の人数が、利用者数の計算式に対して不足していないか
- 認知症介護指導者研修修了者が1名以上在籍し、退職時の後任体制を検討しているか
- 研修修了者の異動や退職が発生した場合の代替配置計画があるか
- 会議の開催記録(日時、参加者、議題、議事録)が保管されているか
研修修了者が急な退職で欠けると、加算IIどころか加算Iの要件すら満たせなくなる事態になりかねません。研修受講者を1名体制にせず、複数名を計画的に育成しておくことがリスク管理上重要です。
研修計画はどう立てればよいか
加算IIの要件のうち、現場で最も形骸化しやすいのが研修計画です。計画書を作成しただけで実施記録が残っていない、計画はあるが対象者が限定的といったケースは指摘を受けやすい部分です。
研修計画を立てる際は、次の項目を年間スケジュールに落とし込むと運用しやすくなります。
- 研修テーマの年間一覧(例、認知症の中核症状とBPSDの理解、コミュニケーション技術、身体拘束廃止、緊急時対応など)
- 実施時期(月単位でのスケジュール)
- 対象者(新人、経験者、夜勤専従者など階層別に分けると実施率が上がる)
- 講師(認知症介護指導者研修修了者が担当するか、外部講師を招くか)
- 実施形式(集合研修、OJT、オンライン研修など)
- 評価方法(理解度確認テスト、振り返りシート、実践への反映確認)
年間計画のたたき台としては、四半期ごとにテーマを設定する方式が運用しやすいです。
| 時期 | テーマ例 | 対象者 |
|---|---|---|
| 第1四半期 | 認知症の基礎知識と自立度判定の実務 | 全職員 |
| 第2四半期 | BPSDへの対応とパーソン・センタード・ケア | 介護職員 |
| 第3四半期 | 身体拘束廃止と緊急時対応 | 全職員 |
| 第4四半期 | 研修の振り返りと翌年度計画の検討 | リーダー層 |
重要なのは、計画を作って終わりにせず、実施後に参加者の出席記録と理解度を残しておくことです。実地指導や運営指導の場面では、計画書だけでなく実施記録の提示を求められることが一般的なので、両方をセットで管理する体制を整えておく必要があります。
算定開始までの手続きはどう進めるか
加算IIの算定を開始する際は、体制が整っているかを自治体への届出前に自事業所で確認しておくことが重要です。届出後に要件未充足が判明すると、過誤請求や返還の対象になり得ます。
算定開始前の確認チェックリストは次の通りです。
- 対象者割合が50%以上であることを直近の実績で確認したか
- 認知症介護実践リーダー研修修了者の人数が基準を満たしているか
- 認知症介護指導者研修修了者が1名以上配置されているか
- 研修計画書が作成され、年間スケジュールが具体化されているか
- 会議開催の記録様式が整備されているか
- 届出様式に必要な添付書類(研修修了証の写しなど)が揃っているか
- 届出後も毎月の人員配置と対象者割合を継続的にモニタリングする体制があるか
届出は都道府県または市区町村の介護保険担当窓口に対して行います。様式や添付書類は自治体ごとに指定がある場合があるため、事前に窓口へ確認したうえで準備を進めることをお勧めします。
まとめ
認知症専門ケア加算IIは、加算Iの基準に加えて認知症介護指導者研修修了者の配置と研修計画の作成・実施が求められる加算です。人員要件は利用者数に応じた計算が必要であり、研修修了者が1名体制にならないよう複数名の育成を計画しておくことがリスク管理上重要になります。研修計画は作成だけでなく実施記録とセットで管理し、運営指導の際にいつでも提示できる状態を保っておくことが、安定した加算算定につながります。
出典
- 厚生労働省「介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/housyu/index_00006.html
- 厚生労働省「認知症介護実践者等養成事業の実施について」(認知症介護実践リーダー研修・認知症介護指導者研修の研修体系)
- 認知症介護研究・研修センター(認知症介護実践者等養成事業の実施機関) https://www.dcnet.gr.jp/