「認知症専門ケア加算Ⅳ」という区分は存在しない
介護報酬の告示に、「認知症専門ケア加算Ⅳ」という区分はない。認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)の報酬を定める告示第126号に並んでいるのは(Ⅰ)と(Ⅱ)の2つだけである。上位区分が新設されるという情報を見かけたら、審議会資料と告示の両方を確認してほしい。
令和8年度(2026年度)介護報酬改定は実在するが、令和9年度改定を待たずに行う期中改定で、内容は介護職員等処遇改善加算の拡充と基準費用額(食費)の引上げの2点に限られる。加算の新設も廃止も含まれていない。次の本体改定は令和9年度である。
現行の区分と単位数
| 区分 | 単位数 |
|---|---|
| 認知症専門ケア加算(Ⅰ) | 3単位/日 |
| 認知症専門ケア加算(Ⅱ) | 4単位/日 |
要件は厚生労働大臣が定める施設基準に置かれており、認知症介護に関する研修を修了した職員の配置などが求められる。区分ごとの具体的な人数や割合は年度によって読み替えが入ることがあるため、届け出る前に必ず告示と解釈通知の現行条文にあたること。
区分を確かめるときの順番は決まっている。加算の名称で告示を検索し、名称が見つからなければその区分は存在しない。次に単位数を告示の条文から取り、要件は施設基準の告示と解釈通知の両方で読み合わせる。改定の全体像は厚生労働省が公表する改定概要資料で確認する。この4つを踏めば、まだ決まっていない制度を前提に人員計画を組んでしまう事故は防げる。
収入は1日単位で考えると小さい
定員18名が全員算定する前提で、1単位10円、30日として計算する(単価は地域区分により異なる)。
- (Ⅰ) 3単位 × 10円 × 18名 × 30日 = 16,200円/月 → 年間 194,400円
- (Ⅱ) 4単位 × 10円 × 18名 × 30日 = 21,600円/月 → 年間 259,200円
(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は1日1単位、金額にすると 1単位 × 10円 × 18名 × 30日 = 5,400円/月である。研修修了者を1名増やすための受講料と勤務調整のコストを、この5,400円と並べて比較することになる。
上位区分を待つ前提で人員計画を立てるより、いま取れる区分を確実に取り、記録を実地指導に耐える形にしておくほうが確実である。
認知症ケアを評価する加算は他にもある
認知症ケアの体制を厚くしたときに効く加算は、認知症専門ケア加算だけではない。
| 加算名 | 単位数 |
|---|---|
| 認知症チームケア推進加算(Ⅰ) | 150単位/月 |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅱ) | 120単位/月 |
| 科学的介護推進体制加算 | 40単位/月 |
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)を18名で算定した場合、150単位 × 10円 × 18名 = 27,000円/月、年間で324,000円になる。認知症専門ケア加算(Ⅱ)の年間259,200円より大きい。
ただし対象者の要件、必要な研修、認知症専門ケア加算との併算定の可否は加算ごとに異なる。どれを取りにいくかを決める前に、告示と解釈通知でそれぞれの要件を読み合わせること。
なお、1月につきで算定する加算は、1人あたりにすると月400円から1,500円程度にしかならない。一方で1日につきで算定する加算は、1単位でも18名・30日で5,400円動く。数字の大きさだけで比べると月単位の加算が大きく見えるが、収支への効き方は日単位の加算のほうが積み上がりやすい。自施設で優先順位を決めるときは、単位数ではなく年間の金額に直してから並べること。
準備で起こりやすいつまずき
制度の区分がどうであれ、現場でつまずく場所はほぼ共通している。
- 研修受講を1名に集中させ、退職や異動で要件を満たせなくなる
- 記録様式を入れたものの記入項目が多く、数か月で形骸化する
- 会議は開いているが議事録の保管が不十分で、実地指導のときに提示できない
- 単位数の増加分だけを見て、記録業務に増える人件費を試算に入れていない
記録の形骸化は、算定を始めたあとに指摘を受けやすい。項目数を絞り、現場が続けられる粒度に調整するほうが結果的に残る。
研修の受講計画も同じである。実践リーダー研修は自治体の開催回数が限られ、申込時期を逃すと次の機会が半年以上先になることがある。誰がいつ受講するかを年度のはじめに決め、複数名に分散させておけば、退職や異動で要件が崩れる事態を避けられる。受講済みの職員の一覧と修了証の保管場所を1か所にまとめておくと、届出のときにも実地指導のときにも探す手間がなくなる。
まとめ
認知症専門ケア加算の区分は(Ⅰ)3単位/日と(Ⅱ)4単位/日の2つで、上位区分はない。令和8年度改定でも新しい区分は設けられていない。区分間の差は1日1単位と小さいため、認知症ケアの評価を厚くしたいなら認知症チームケア推進加算まで視野に入れて比較すること。単位数と要件は、解説記事ではなく告示の現行条文で確かめる。
出典
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa7862&dataType=0&pageNo=2
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第96号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab4585
- 令和8年度介護報酬改定について(厚生労働省老健局) https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001675936.pdf
- 令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省老健局) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230329.pdf
