D to P with Nとは何か、なぜ認知症グループホームに関係するのか?

D to P with N(Doctor to Patient with Nurse)は、医師が患者を遠隔で診察するオンライン診療のうち、患者のそばに看護師等が同席して補助する形態を指します。令和4年度(2022年度)診療報酬改定で新設された区分で、医師が単独で行うオンライン診療(D to P)よりも医療安全上の担保が高いとされ、評価上の取り扱いが分けられています。

認知症グループホームにとってこの仕組みが重要なのは、次のような場面で活用できるためです。

  • 配置医師や協力医療機関の医師が遠方で、頻繁な往診が難しい
  • 夜間・休日に急変が疑われるが、往診までに時間がかかる
  • 精神科の主治医が施設から離れた病院に所属しており、定期受診の負担が大きい

こうした課題に対し、看護師が入居者のそばに同席してタブレット等で医師の診察を受けられれば、往診回数を抑えながら医療の質を維持できます。とくに精神科医療連携が必要な入居者が多い施設では、通院や往診の物理的負担を軽減する手段として注目されています。

現行のD to P with N算定要件はどうなっているのか?

2024年度(令和6年度)診療報酬改定で要件の一部が見直され、現行制度は以下のような枠組みになっています。

項目現行の主な要件
対象患者へき地・離島の患者に加え、在宅医療を受ける患者の一部にも拡大
看護師の所属配置医療機関の看護師のほか、訪問看護ステーションの看護師等も一定条件で可
通信環境オンライン診療の指針に準拠した情報通信機器の使用が必須
記録義務診察内容、同席看護師の観察記録、バイタル測定結果の記載が必要
算定できる医学管理料等情報通信機器を用いた場合の医学管理料、精神科在宅患者支援管理料の一部区分など

認知症グループホームで運用する場合、実務上のポイントは次の3点に集約されます。

  1. 同席する看護師が誰か(施設配置看護師か、外部訪問看護か)を契約書で明確にしておくこと
  2. オンライン診療の指針(厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」)に沿った通信機器・記録体制を整えること
  3. 精神科主治医との連携において、対面診療とオンライン診療の頻度バランスを事前に取り決めておくこと

これらが曖昧なままだと、算定要件を満たせず加算漏れが生じたり、逆に要件を満たさない状態での算定として指摘を受けるリスクがあります。

2026年度改定でD to P with Nはどう変わる可能性があるか?

2026年度診療報酬改定に向けては、中医協の議論の中でオンライン診療の活用拡大が継続的なテーマとなっています。現時点で公表されている審議の方向性から、認知症グループホーム関連で影響が想定される論点は次の通りです。

  • 対象患者要件のさらなる拡大(へき地要件に限定しない在宅患者全般への適用検討)
  • 看護師要件の運用明確化(介護職員による補助的な同席の可否を含めた議論)
  • 精神科領域における情報通信機器を用いた診療の評価見直し
  • 在宅医療DX推進の一環としての記録・情報連携の電子化要件強化

注意したいのは、これらはあくまで審議段階の論点であり、正式な要件は改定告示・通知が発出されてから確定するという点です。施設側が先走って体制変更を進めるのではなく、以下のステップで情報を追う姿勢が現実的です。

  1. 改定前年(2025年)の中医協資料を定期的に確認する
  2. 協力医療機関・配置医との間で改定動向について情報共有する場を設ける
  3. 改定告示後、速やかに社内の算定マニュアルを更新する

認知症グループホームはD to P with Nをどう活用すべきか?

制度改定の行方を待つだけでなく、現行制度の枠内でできる準備を進めることが重要です。活用を検討する際の判断軸を整理すると、次のようになります。

判断軸確認内容
医師との距離配置医師・協力医療機関からの移動時間が長く、往診頻度に制約があるか
入居者の状態オンライン診察で対応可能な安定期の慢性疾患管理が中心か
看護体制施設内または連携する訪問看護の看護師が同席できる勤務体制か
通信環境Wi-Fi環境やタブレット端末など機器面の整備状況
家族の理解オンライン診療への切り替えについて家族への説明と同意が取れているか

この5項目のうち3つ以上に課題がある場合は、いきなり本格導入するのではなく、まず月1回程度の試験運用から始めることをおすすめします。試験運用を通じて記録様式や看護師の動線を整えることで、本格運用時のトラブルを減らせます。

導入前に確認すべきチェックリストとは?

実際に体制整備を進める際は、以下のチェックリストを活用してください。

  • 配置医師・協力医療機関との契約書にD to P with Nの実施可否が明記されているか
  • 同席する看護師の所属と勤務時間帯が明確になっているか
  • オンライン診療用の通信機器と回線が指針に適合しているか
  • 診察記録(バイタル、観察内容、医師の指示)のフォーマットが用意されているか
  • 入居者・家族への説明と同意書の取得ができているか
  • 精神科主治医との対面診療の頻度が取り決められているか
  • 2026年度改定の情報を定期的に確認する担当者が決まっているか

この7項目のうち5項目以上を満たしていれば、現行制度下での運用に大きな支障はないと考えられます。満たしていない項目がある場合は、優先順位をつけて整備を進めることが望まれます。

まとめ

D to P with Nは、看護師の同席によって医療の質を担保しながら、往診負担を軽減できる仕組みです。2022年度の新設以降、2024年度改定で要件が一部緩和され、2026年度改定でもさらなる見直しが論点になると見込まれています。認知症グループホームとしては、制度の詳細確定を待つだけでなく、看護体制や通信環境、医療機関との契約内容を今のうちに点検し、改定後にスムーズに対応できる準備を進めておくことが重要です。